白昼観測記
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ケースⅠ
手袋も必要としない暖かい冬に
指に食い込む鞄は誇らしかった 過ぎる時間を凛と踵の上に乗せて これが僕だと思いたかった なのに現実で逢ってしまった この街に帰って来たのは僕だけじゃなくて 貴方との日常が交錯する刹那 意識は一瞬で奪われた 何の因果で今此処で どのくらいの確率で擦れ違った 積み木は一瞬で奪われた 貴方と貴方の大切な人に 一度見ておきたかっただけの既知の事項 泣けないのに泣きたかった 貴方が連れている人はいつだって可愛らしかった 吐息も可視化しない暖かい冬に その手が小さな人の腕を導くのを見た 全ては一瞬の為に奪われた 無情な偶然で今無防備に擦れ違った ぷつりと消えた幻を夢中で追い駆けた 僕は貴方を探してしまった 纏ってみたかっただけの自負が虚無に呑まれる 動揺が胸を裂く 気づいた感情が僕を落胆させる 解放されたいのに消えない残留物が 意志に相反する浅ましさを見せる 夢の中でまで遠い声も横顔も 気づいてはくれないと 手袋も必要としない暖かい冬に 指に食い込む鞄は誇らしかった 過ぎる時間を凛と踵の上に乗せて だからなかった事にしてこんな自分は 貴方がそうであるように 僕も変わり続けているから どうかもう夢には見ないで欲しい 感傷も必要としない暖かい冬に その目の真っ直ぐな沈黙を見た 全ては貴方の為に奪われた 忘れて 気づかないで だけど思い出して 無表情で暖かい冬に生きる人々の 禍福を想像するこの感情を殺して 滲んだ現実が目蓋の裏に染みた 雨ばかり降らせる綺麗な空が染まる 最後の衝撃を残して去る今日を憎んだ PR
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